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システムJisso-CAD/CAE 公開研究会(H24-2)

11月27日(火)、エレクトロニクス実装学会 システムJisso-CAD/CAE研究会の本年度2回目となる公開研究会が開催された。
本年度、この研究会では「回路・実装設計におけるグラウンドとEMC」と題して、6月の「EMC設計技術」を承前として、ファシリテーターに岡山大学の豊田先生を迎えワンテーマを追求する継続的な研究活動を行っている。今回は前回の議論の中で浮かび上がった「平衡・不平衡」に着目し、「平衡/不平衡伝送線路と放射」というサブテーマで研究した成果をご発表いただいた。

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1. シールド付ツイストペアケーブルの実装方法とノイズ耐性の評価 (三菱電機 岡さん)
最初の発表はセットメーカーである三菱電機 EMCセンター長の岡さんから、代表的な平衡伝送線路のひとつであるツイストペアケーブルのEMCについて。「ノイズ耐性(=EMS)」の評価なのでサブテーマである「放射(=EMI)」とは逆だが、逆もまた真なり、ということが後に続く発表で判ることになる。
評価内容は、ケーブルそのものというより末端処理、つまりコネクタ接続部の処理方法を検討したもの。現実の平衡伝送線路では発生が避けられない不平衡に起因する、コモンモードノイズ(電流)を機器に侵入させないためにはどうすればよいか、実験によって明らかにしている。
ノイズはケーブルのシールド(シース)を伝わるので、シースを機器に接続しなければノイズも機器に伝播しないだろうと、シース端を開放する設計が多いが、これは大きな誤りであることが判る。少なくとも機器シールドにつないだ方がベターだ。シースを全周接続するのが最も良好な結果が得られたが、ピグテイル(Pig tail)接続でも接続点を増やせば比較的よい結果となることが判った。

2. モード等価回路を用いた多線条配線のコモンモード解析 (岡山大学 豊田先生)
サブテーマに取り上げた平衡伝送線路は複数の(少なくとも2本の)信号線とグラウンドからなる「多線条線路」であり、複数のコモンモードが存在することが話をややこしくしている。この発表では、平衡線路を解析的な回路モデル(モード等価回路)として導出することで理論的なバックグラウンドを明らかにし、このモデルの適用事例も紹介された。
教科書的というか大学の講義そのものでキャッチアップするのが大変だったが、ツールを使って数値解析したり、実験や実測するだけでは得られない思考実験的なモデル組立てのアプローチは大変ためになった。
モード等価回路というのは、モード電圧とモード電流に対する方程式になるのが通常の電信方程式とは異なる。インダクタンス行列、キャパシタンス行列に相当する部分が対角行列となって回路もシンプルな形となる。ただし、ノーマルモードとコモンモードで回路が異なる点に注意。
岡さんの実験した構成への適用事例が紹介された。このモデルでは均一媒質を想定している等の理由で300MHz近くになると測定とのズレが生じてしまうが、数値計算に頼らずに解析的に解くことができ、なおかつ特性インピーダンスに基づく計算に比べると陰に電磁界分布を含む分、精度良く求まることが示された。

3. 平衡・不平衡における電磁界シミュレーターによるノイズ解析 (AET 上田さん)
今度は、数値計算の出番。岡さんの実験された構成をモデル化し、シミュレーターに解かせてみた結果が紹介された。2mもあるツイストペアケーブルにも関わらず、そのEMC特性はわずか20mmの接続部分に支配されていることが良くわかる。モデルではピグテイルの処理を左右対称、非対称など様々なパターンで試されていた。いろいろなケースを作って試せるというのは、シミュレーターの本領発揮というところか。
後半では、この後出てくる渡辺さんの実験モデル、プリント基板上の平衡伝送配線のシミュレーション結果も示された。なかなか熱の入った解説で時間が足りなかったのが残念。

4. プリント基板上の配線における平衡度不整合によるコモンモード電流の発生 (岡山県工業技術センター 渡辺さん)
これまでケーブルの検討だったが、こちらはプリント基板をテーマにコモンモード電流の発生を解析した内容。プリント板上の平衡配線というわけではなく、1本の信号線とグラウンドの2線系を想定している。したがってここでいう「グラウンド」は理想的なグラウンドではなく、あくまで信号のリターンとしての扱いだ。
渡辺さんが取った手法は、コモンモード電位に着目したコモンモードアンテナモデルで、豊田先生の回路解析と違うのは電磁場解析である点。基板形状の変化などにより信号線とグラウンドの均一度が変化する点に信号源を置いたモノポールアンテナを想定し、放射予測を行う。
面白いのは、信号線脇にガードトレースを置いたケースも解ける点で、豊田先生もモード行列の導出に使った電流配分率という概念を適用し、ガードトレースの存在による電流配分率の変化で効果の予測ができている。

5. 非対称差動伝送線路の電磁放射特性 (秋田大学 萱野先生)
今度は、プリント板での差動伝送を取り上げた発表。SIだけ見ると差動伝送の各部分でのバランスの崩れは、多少の影響はあるものの、最終的に配線長を揃えることでそこそこのレベルまで改善できることは知られている。また、コモンモードチョークがSIの改善に役立つことも周知の事実である。
ところが、EMIを見てみると対称性の崩れは、特に高い周波数で大きく影響していることが示された。等長配線はSIを良くしてもEMIには寄与しない。近傍界観測で得られたデータが顕著で、平衡度の崩れた部分は強い磁界結合が見られコモンモード放射が起きている。

6. パネルディスカッション
最後に、本日の講演者をパネラーとして会場の参加者も交えてパネルディスカッションが行われた。
ほとんどの発表結果から、実際の設計では平衡度を保った設計が良いことが判ったが、現実の設計でどこまで理想に近づけられるかという議論があった。理想的とはいかないまでも、"more is better"で、トレードオフの材料にはなるというのが、現実的な落としどころだろうという結論に至った。
大テーマである「グラウンド」について、パネラーの皆さんの考え方を伺った。あくまでも理想的な基準であるとか、現実にグラウンドと呼んでいるものは「リターン」ぐらいに捉えているという回答が多かった。リターンだったら差動(平衡)伝送にグラウンドは不要か? というのも議論になった。グラウンドを広く大きくというのは、その方が設計がラクだからという意見もあって、このテーマの深遠なところを感じさせる議論であったように思う。

この研究会は自由参加で、希望すればこのテーマの議論に参加できるので、ご興味のある方はメールなどでご連絡いただきたい。次回の公開研究会は来年の6月を予定しているが、それまでの間にも新たなサブテーマで議論を進めていく予定だ。

前回、6月の研究会に比べて今回は60名を超える参加者に出席いただき、大盛況だった。
また、ひとつのテーマと共通の課題(モデル)を、理論、シミュレーション、実験といろいろなアプローチで解いていて、かなり面白い研究会になったと思う。

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Comments

コメントありがとうございます。
通信系はトランスで分離できているからまだ良いのですが、デジタルはシングルエンド→ディファレンシャルを平気で直結してるので、大変です。

Posted by: arap | 2012.11.29 12:57 AM

お疲れ様です。
平衡伝送のグランド(シールド)は深いですね。
特にEtherのようなパスルトランスで終端されると
ケーブルは基本浮いた状態なのでSIは良くてもEMI
は何を拾って放射してるのか、とかね。

Posted by: gokents | 2012.11.28 05:05 PM

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