アジレントメジャメントフォーラム2012
6月19日(火)~20日(水)にかけて開催されたアジレントメジャメントフォーラム2012に参加してきた。
2日間、正確には初日は午後からなので1日半にわたって6本程のトラックが用意されている。今回はパシフィコ横浜アネックスホールと広い会場で大規模に行われた。
まるまる2日はスケジュール的にきついが、両日とも聴きたいセッションが午後だけだったので半日づつの参加で済んだ。
最初に「最先端メモリ実装でのSI/PI/EMIシミュレーション活用事例」というタイトルで、Hany Fahmy氏の熱のこもったセッションを聴いた。ADS/Momentumの活用例を交えて、同氏がこれまでIntel、NVidiaで関わってきた設計事例を中心にした内容。テーマとしてはありきたりだが、複数社の設計手法を同時に紹介していてなかなかおもしろかった。
初日はあと、大津谷さんがPI設計手法として同社のVNA E5061Bを使った電源インピーダンス評価を解説されたセッション、佐貫さんによるDDR評価、菊地さんによるMSO/ロジアナ使いこなしというところを聴講した。
後ろ2つは、それぞれInfiniiSimというスコープ内蔵シミュレータ、InfiniiViewというオフラインビューワがポイント。
InfiniiSimはスコープ内でプローブやフィクスチャの影響を取り除いたり(デエンベディング・エンベディング)、イコライザ後の波形を見ることができる。要するに伝達関数をフィルタにして適用しているわけだが、シミュレータと違い、計算結果を測定中の波形にリアルタイムで反映できる点が大きい。
InfiniiViewは保存した波形をPCに移して見ることができるビューワだが、単なるビューワ以上の機能を持っており、波形データの演算やパラメータ測定などもできる。一旦取ったデータを捨てずに、とことん使い倒すというのはレクロイのオシロの思想と同じだ。(テクトロは条件を決めて早く捕まえる、という感じ。その点、アジレントはロングメモリを謳っていたけどレクロイほど徹底してなかった)
二日目は最初に、長嶺さんによるDisplayPortの測定手法を聴講した。先週、テクトロのセミナーでは実際の測定方法の話が聴けなかったので、ためになった。続いて、オシロスコープ上での波形観測点移動(依田さん)は、これまたInfiniiScanの話題で、昨日よりさらに詳しい内容だった。"General Purpose 9 Block"のハコが8つしか見えないのは気のせい?
次に、林さんのUSB 3.0評価に関するセッション。林さんのセミナーを受けるのはすごく久しぶりだ。USB 3.0の評価は実際の仕事では未経験だけど、USB 2.0に比べて格段に大変そうだ。できればやりたくない…というか、持ってる設備で評価できるのかな…戻ったらチェックせねば…と思った。
最後に、荒井さんによるPCI Express 3.0のセッション。日本でのPCIe Gen3に関する第一人者のお話なので、非常に判り易かった。USB3もPCIe3もRxではアイがつぶれていてイコライザを通した波形を見ないと判定できないので、非常に厄介だ。また、レシーバテストにBERTを持ってこなきゃならないので、こっちも大変。
昨今のインターフェイスは認証試験にいろいろな計測器を用意しなければならなくて、計測器メーカーさんはオイシイんだろうなぁとか思いつつ…。
アジレントのエンジニアの皆さんはさすがに知識も経験も豊富で、どのセッションを聴いても判り易かった。決して表面的ではなく、詳しく突っ込んだところまで説明されているのが特徴的。皆さん「限られた時間なので概要だけですが…」と仰っていたが、決してそんなことは無かった。もちろん、時間があればもっと面白いお話も聴けたのだろう。
製品はいずれも非常に面白くて、探究心をくすぐる使ってみたい機器ばかりだ。だが、マニアックすぎるというか、研究・開発に使えたら面白そうだけど、設計の現場だと時間を掛けて使う余裕がなさそう。例えば、InfiniiScanは伝送路やフィクスチャのモデルをSパラなどで与えてやる必要があるのだが、それには別途VNAで測定するなり、シミュレータを使ってSパラを取る必要がある。プローブなどの既存モデルはあるのだが、ネットアナやシミュレータが揃って無いとInfiniiScan単体ではせっかくの機能の一部しか活用できない。また、時間も予算も限られた設計フローの中でどこまでやるか、という問題もあるだろう。
確かに、そこまでやらないとならない難しい設計というのもあるのだろうが、低開発コスト、超短納期の昨今、日本でどの位引き合いがあるのか興味深い。
今回、会場が横浜だったので都内から出掛けるには少し遠かった。昨年までのように品川だとラクだったのだが。初日の受付は非常に混雑していて人の流れを考慮していない配置に手際の悪さを感じたが、翌日は改善されていたのには感心した。ただ、おそらく展示を見る時間を作るためだと思うが、会場ごとにテーマが決まっているわけでもなく、各コマの開始時間もずれているプログラム編成だったので、聴講したいセッションが微妙に重なっていて聴けなかったり、会場内の移動が多くて煩わしかった。展示もゆっくり見たかったのだが意外に見る時間が無かったのも残念。
セミナー資料の紙配布は無かったが、後からダウンロードできるようなので。身軽なのは助かる。
※ダウンロードは参加登録者限定のようなので、リンクを外しました。
Comments
大変ご無沙汰しております。「パワーインテグリティのすべて」の訳者の一人國頭です。その節は大変お世話になりました。
実は、来る10月16日(火曜日)秋葉原で開催される、アジレントデザインフォーラム(ADF)2012にて、講演をさせて頂く事になりました。宜しければお越し下さい。PIではなくSIにフォーカス致します。題名は、
「どこまで使える?」プリント基板設計でのADS活用
です。詳しくは私の事務所、デバッグ・ラボの以下のページをご参照下さい。
http://debuglab.jp/whatsnew/agilent_adf2012.html
ステマっぽくてスミマセン(^^;)
Posted by: 國頭 延行 | 2012.10.06 09:53 PM