JIEP講演大会 2012年 2日目
エレクトロニクス実装学会の春季講演大会 2日目(3/8)は18の講演を聴講した。ここではいくつか面白かった講演を取り上げてみたい。
[8A-06] パッチコンデンサを用いたプリント配線板における遠端クロストーク低減技術 (佐賀大 佐々木先生)
信号線間に容量を持たせることで遠端クロストーク(FEXT)レベルを下げる。線間容量はクロストークの要因のひとつなので、容量を付加してクロストークを下げるという発想は奇妙に思えるが、過去のポストで書いたようにFEXTは誘導結合と容量結合の和であって、互いに逆の位相を持つので、うまく制御してやれば相殺することができる。
容量を付加するのにチップ部品としてコンデンサを置く方法があるが、寄生成分の影響が大きい。このため銅箔テープのようなものでパッチを作ってパターン上に貼り付ける方法が提案された。
断面図を見ていると、配線パターンの上にもう一層ベタパターンが形成されてマイクロストリップ線路がストリップ線路のようになることに気付く。つまり「容量を付加する」ということは「マイクロストリップをストリップラインに見せる」ことと同等の効果をもたらし、クロストークが低減するというのもすんなり納得できた。
[8A-07] ビアレスEBG構造の小型化検討―メタマテリアル技術の応用例― (沖プリンテッドサーキット 上谷さん)
EBG構造というとビアとパッチパターンで形成されたキノコ型のいわゆる「マッシュルーム構造」が有名だが、ここでは「ビアレス」の名の通り、パッチパターンとそれらをつなぐブリッジで構成された平面周期構造が検討された。マッシュルーム型は通常配線層以外にEBG構造用の配線層が必要だったり、IVHかSVH技術が必須なので、実際に使うには敷居が高いが、シンプルな平面構造だと採用しやすいだろう。
パッチパターンとブリッジの組合せは、個人的には千鳥格子を想起させる。千鳥格子はブリッジがナナメだが、ここで扱うのは腕の部分を真直ぐにした感じ。EBG構造を小型化しないと機器への組込みは困難だが、ブリッジ部を工夫する、具体的にはインダンクタンスを持たせるためミアンダやスパイラル形状にすることで、単位セル(周期構造の1つの単位)を5mm角に収めた。
基本的には回路エリア(パーティション)間で使われることを想定してるらしいが、例えば電源層(ベタ)全体に使ったらどうなのだろうか。良いリターンパスにはならないけど配線は全てGNDにリファレンスするような層構成の場合なら使えるんじゃないだろうか。
[8A-08] 対雑音設計を目指した車載電子機器の回路基板設計とグラウンド処理 (デンソー 前野さん)
招待講演。自動車はノイズ発生源である車載電子機器(ECU)から車体全体を這う長大なワイヤハーネスがアンテナとなって、盛大にノイズをばら撒くのでEMC設計が大変である。前野さんの豊富な経験からGND面にスリットを入れるべきではない、「百害あって一利なし」ということだ。よく、アナログ回路とデジタル回路はパーティション分けして、それぞれGNDを分けろ(そして1点で接続)とされているが、分けないほうがノイズが出ないという実験結果が示された。
それでも、実際にはデジタル-アナログ混在基板ではデジタルGNDとアナログGNDは分けてくれと、大抵お願いしてくるのはアナログ屋さんのほうだ。アナログ回路がデジタル動作に悪影響するケースはほとんどなく、だいたい悪者はデジタルの方だが。
ただ、今回の内容を良く見てみると、デジタル-アナログ分割線の上を多数の信号が横切っている。せっかくGNDを分離しても他の層でブリッジしていてはノイズの回り込みを防げないし、信号品質も悪くなり、良いことはない。ここはきっちりセオリーを守って、分割線上を信号線やベタが横断しないようにすべきだろう。その上で、さらに分割線の影響について評価すべきだと思った。
[8A-09] 差動伝送路用コモンモードノイズフィルタの伝送特性評価 (三菱電機 岡さん)
コモンモードフィルタ(CMF)の特性評価に関する発表だが、興味深いのは通常のシリーズに入れるCMFの他に差動線路にパラレルにディファレンシャルモードフィルタを入れたことだ。シングルエンド伝送のフィルタは、シリーズにインダクタンス、パラレルにキャパシタンス(コンデンサ)を入れて周波数による通過特性を利用したフィルタ(一般にはローパスフィルタ)とするが、差動伝送路を伝搬する信号モードに応じた通過特性を利用したフィルタというのは、新しい試みだといえるだろう。
[8A-18] 低ESRと高ESRコンデンサの組み合わせ使用による電源インピーダンスの低減手法 (ムラタ 山長さん)
デカップリングコンデンサ同士による反共振によるインピーダンスピークを抑えるため、適切なESRを持つコンデンサを使う手法は従来も提案されてきた。「適切なESR」というのは、ESRが低いとQが高くなり急峻な反共振ピークが発生しやすくなる一方、ESRが高いとそもそも期待した低インピーダンスが得られないため、「高くもなく低くもない」”Controlled” ESRが求められる。
この発表では、同じ容量で低ESRのコンデンサと高ESRのコンデンサを併用する方法が提案された。電源のインピーダンスは低い方が支配的になるため、低周波数領域では低ESRのインピーダンスが、反共振部では高ESRのインピーダンスが見えてピークは抑えられる。ポイントは同じ容量、同じパッケージ(=同じESL)のコンデンサを用いることで、2つのコンデンサ間に発生する反共振を(自己共振周波数が同じなので)起こさないという点だ。
適切なESRのコンデンサを選んでやれば、わざわざここまでしなくても…という気もするが、参考になった。
[8A-19] 電源供給回路共振への臨界減衰適用によるIC/LSIのEMC性能改善 (岡山大 五百旗部さん)
電源供給回路(PDN)の共振を抑制するため、ボードのPDN、チップ-パッケージのPDNそれぞれにダンピングとして、インダクタと並列な抵抗を挿入する手法の検討。過渡応答の減衰振動が起きない「臨界共振」という解を用いてパラメータを決定する。
意外に低い周波数での議論で、さらにパッケージよりボードの共振周波数の方が高かったので「おやっ」と思ったが、平行平板共振ではなく回路網共振なのでこれでよいのだそうだ。
実験で挿入したインダクタ+抵抗の寄生成分、特に寄生容量の影響が気になった。
他にもイミュニティ評価に関する発表や高速伝送用ケーブルの製法に関する発表など面白いものがあったが、長くなるのでやめておく。
朝、最初のセッションは、部品内蔵基板に関する講演を聴きにB会場に行ったが、朝早くにも関わらず会場は大盛況で、3人掛けの机に2人づつが全て埋まり、後ろに立ち見が出るほどだった。
その後、高速伝送のA会場に移動したが、B会場に比べると空席が目立ち寂しい状況だった。
高速伝送はハイエンドが40Gbps程度まで議論されているが、使われているのは一部通信関係くらい。コンピュータ系では10Gbps前後で物理層の設計技術はほぼ確立されているといっていい。このため、一般に関心が低い、高い関心を示す人が少ないのかもしれない。
だが、例え技術の基礎が確立されていると入っても、実際に設計に掛かると現実的な困難が立ちはだかるのは間違いない。このような機会に情報交換したいという人が少なくなってきたのは、設計そのものが日本から減少して来ている証左なのだろうか。
3日目の電磁特性関係はRF/アンテナ技術が中心なので参加しなかった。次回(来年)は東北大学で開催されるそうだ。















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